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2018年02月10日 (土) 内容

能楽堂の建築についてのお話です。(屋根のお話)

常日頃、能楽堂の屋根は美しいな~と感じているため、以前にその屋根についてブログで少しご紹介しました。
https://yokohama-nohgakudou.org/staff-blog/?p=804
その際にも書きましたが、横浜能楽堂は、平成14年(2002年)に一般社団法人公共建築協会「第8回公共建築賞」を受賞しています。建築竣工時や建築賞応募時の設計図書を見るにつけ、図面だけではわからない設計コンセプトが知りたくなりました。
そこで、先日、横浜能楽堂設計者である大江建築アトリエ大江新様にお越しいただき、建築家のお立場からいろいろな話を伺いました。横浜能楽堂建築の素敵ポイントについて、少しずつ皆さまにご紹介していきたいと思います。今回は、屋根のお話です。

 

まず屋根の勾配についてです。
寺社などの伝統建築の屋根は通常はゆったりとした勾配で、横浜能楽堂のようにこんな急勾配の屋根は珍しいそうです。急勾配は住宅の藁葺き屋根にはあります。ちなみに、藁葺きは、藁が腐りやすいので水を流し落としやすくするために急勾配になっているそうです。また、敵に簡単に攻め込まれないように、松本城、熊本城の板壁にも急勾配が見られるようです。
勾配をゆるくして軒も確保しようとするともっと広い敷地が必要となります。また、近隣及び景観への配慮から、高さを抑え、2階壁面を屋根として扱う設計としました。このような理由から、この急勾配が生まれたわけですね。頂部から軒先への勾配は、よ~く見てみると直線ではなく、かすかにふくらみのある「むくり」になっていて急勾配ながら、暖かみが感じられるような気がします。必要性から生まれた急勾配ですが、緑青色の銅の一文字葺き(いちもんじぶき)と相まって、とても雰囲気のある素敵な屋根になっているな~と思います。

 

次に玄関入口部分にあるデザイン上のポイントの破風(はふ)です。
玄関入口屋根がまっすぐになっている形状を「平入り(ひらいり)」と言いますが、横浜能楽堂は、平入りではなく、曲線状の唐破風(からはふ)で、はなやかな印象を与えています。そのデザインは、重くなりすぎないように現代的なデザインになっています。その下には破風にあわせた、こちらもまた現代的デザインの蟇股(かえるまた)が、水平材を支えています。豪華絢爛ではない、すっきりとしたやさしい印象だと思います。先日の首都圏の大雪の日には、しっかりと屋根の雪を受けており、ちょっと健気な破風でした。

 

能楽堂の屋根は美しいな~と感じる理由は、ちゃんと設計者の意図するものであったのだと思いました。
横浜能楽堂にお越しの際には、140年余の歴史ある本舞台とともに、美しい建築外観にもぜひご注目くださいませ。毎月第二木曜日には施設見学会を実施しております。公演日はもちろん、施設見学会日も、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

 

はぜの木

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